生臭キリシタンの草鞋

電話が苦手だ。

商売上避けては通れないので、仕方なく未知語やコバイア星人と対峙しなければいけないわけだが。

受ける電話の大抵は話がとっ散らかっているため、こちらで解読しなければいけない。

解読作業を円滑に進めるための潤滑油として、相手方に「こういうことでっか?」と、

要約がてらヒントをくれくれするわけだが、向こうは自分の発した第一声で、

「物事は全て伝わった!愚問をよこすでない。」

というような態度であらせられるので、話が全く進まない。

先月の話。

ヒステリックババアが開口一番に単語を連発。

もうこの時点でまともに会話をする気があるのかと疑ってしまう。

早速始めた要約作業が気に障ったのか、物凄い剣幕で私の人格否定を始めたのでしばし耳を傾けることにする。

よくわからないところに生えている髭を一本一本抜きながら20分ばかし話を聞いて、そろそろ終わるかなーというところでヒスバアが瘴気を放った。

「電話代!高くなった!払え!こんなんだからあんたはいつまでもこんな商売しないといけないのよ!!!」

瘴気を全身に受けた瞬間、私はおもむろに壁に固定してあった電話機を電話線ごと引っこ抜いて床に叩きつけた。

「こんな」とはなんだ。

商売を馬鹿にされてボイルドタコになるようではまだまだ駄目だ。

なんというかまあ、あんまり「アタシがメートル原器」なんて思わないほうがいい。

エネルギーは限られている。

無駄遣いはよそう。